救急医療では、厳しい時間的・空間的制約をともなうため、医療資源の効率的利用が不可欠です。
致死的な外傷では、時間とともに救命できる確率が急速に減少してしまいます。急性心筋梗塞などの重篤な急病でも、同じ傾向が見られます。従って1分でも早く治療を開始しなければなりません。
一方、事故や災害は定期的に起こるものではなく、その規模にも大きなばらつきがあります。常時最悪の状況に備えた準備をすると、多くの人員・設備が遊んでしまうことになるため非効率です。逆に準備がひどく過少だと、いざという時に対応ができません。事が起きてから手配をしても、時間・空間的制約のため手遅れになってしまうからです。
この問題は、古来担当者を悩ませてきました。
解決法の一つは、医療資源と傷病者をできるだけ少ない箇所に集中することです。大数の法則によってばらつきが平準化され、また繰り返しにより習熟度が高くなるため、効率が上がります。
また、傷病者を一定時間内に一箇所へ集中するには、迅速な搬送が不可欠です。搬送手段の速度と地勢的制約によって、その救急医療システムが有効に稼動できる空間的限界が決まります。
都市部のように、傷病者の空間的発生密度が高く、高い山などの障害がない場合には、自動車(救急車)による迅速な搬送が可能です。
一方、人口密度が低く、広い面積を対象とする場合や、島嶼・山岳地帯のように交通上の障壁がある場所では、搬送手段に航空機や船舶などを用なけれななりません。
つづく
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