社会福祉費は単なる社会のコストであり、少ないほどよいとか、福祉の高負担は国際競争力を阻害する、という論調をよく耳にしますが、必ずしもそのようなことはありません。
公的年金や失業保険、生活保護などは、受給者に現金が給付されるので、直接にその人の所得となります。これによって退職者や失業者への所得移転がおこり、低所得者の生活を安定させるとともに、消費を増やします。
公的医療保険や介護保険では現物が給付されます。医療には高度な診断・治療機器、薬剤、建物、情報システムなどが必要ですので、これらの関連産業にお金が回り、経済を拡大します。また、医療や介護では、膨大な雇用が創出されます。特に高齢化の進んでいる地方の雇用確保に大きく貢献します。
社会福祉には、このように経済を拡大・活性化する効果があるため、これが増大したからといって、単純に経済成長が妨げられるわけではありません。
また、社会福祉の拡充は、社会保険料雇用者負担分の増加などによって人件費が上がる要因となるので、労働コスト増加によって国際競争力が阻害される、というのも必ずしも正しくありません。
労働コストが高いと、低賃金に依存するような生産性の低い企業が淘汰されてしまうため、むしろ生産性の高い企業が残って国際競争力は高くなる場合があります。
北欧の社会民主主義的レジームの国は、高い国民負担率にもかかわらず、国際競争力の高い企業を持って輸出を行っています。特にスウェーデンの2006年度GDP成長率は4.4%で、日本よりはるかに高いのです。
少なくとも、単純に社会福祉は経済成長を阻害する、と考えるのは、間違いです。
現実は、それほど単純ではありません。
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