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医療 社会福祉 経済

医療や介護、年金などの社会福祉政策と経済との関係は、国家の根本にかかわる大きな問題です。また、高齢化と経済成長の鈍化が見られる先進国に共通の難題でもあります。制度をどのように改革すべきか考えましょう。

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報道と信用毀損-産科医療の崩壊2

 医療機関や医師と患者の間には情報の格差があるため、医療機関の評判ブランドが両者の関係に大きく影響します。評判は、患者が医療機関を信用するかどうかの判断基準の一つになるでしょうし、医療機関にとっては質を厳重に管理して、信用を維持するインセンティブになります。
 
 しかしながら、一旦信用を裏切るようなことが行われたと報道されると、評判やブランドが逆に悪いシグナルを送るようになるため、医療機関は大きなダメージをうけ、場合によっては存続できなくなります。

 悪質な医療機関が淘汰されたり、明らかな過失によって生じた損害が保証されるべきなのは当然です。しかし多くの場合、報道は事実の検証が十分行われる前になされるため、否定的な評判がたつと、過失の有無にかかわらず、その時点で信用は毀損されてしまいます。さらに、一旦低下した信用を取り戻すのは容易なことではありません。
 
 このように、リスクの高い医療を行うと、確率的に予測される事故のリスクよりもずっと大きな信用毀損リスクを負うことになり、一般的な損害賠償保険ではこれを回避できないのです。

 さらに、事故に遭遇した医師個人が警察に逮捕され、大きく報道されるというような事態にまで至ると、産科医は地雷原を歩いているような状態になります。大野病院事件産科医にとって衝撃的であったのは、このような事情によります。

 人員が少なく専門医や高度医療機関によるサポートが受けにくい地方の病院から産科医がいなくなってしまったのは、このような病院での診療は、信用を毀損するリスクが特に高いためです。

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テーマ:政治・経済・時事問題 - ジャンル:政治・経済

  1. 2007/11/03(土) 21:32:11|
  2. 医療崩壊
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検診をうけない妊婦-産科医療の崩壊3

 ”救急車が破水した妊婦を搬送しようとしたところ、収容先を探すのに3時間以上かかって流産した”、という報道がありました。このような状況には、産科医が不足しているということ以外に、別の要素がかかわっています。

 出産は突然するものではありません。女性が妊娠すれば、普通の場合は産婦人科を受診します。そこで妊娠か否かが診断され、正常妊娠であれば、その後は定期的に妊婦検診が行われます。従って出産の際には、通院中の産科へ連絡すれば適切に対応がなされます。
 周産期救急医療システムは、産科の医療機関と異常分娩などを扱う高度医療機関の間のネットワークによって形成されており、一般の救急医療システムとは別のものです。医療機関を受診していない妊婦が出産のため救急車を呼ぶ、というのは異常なことなのです。

 これまでも、未成年の妊娠や検診の習慣がない外国人などが、突然のお産のため救急車搬送されることはありました。最近の特徴は、所得が低くて出産費用を払えないために検診を受けない妊婦が増えていることです。

 正常なお産は疾病ではないので、健康保険の対象外です。おおむね数十万円の自費負担が必要になるため、これを払えない妊婦は検診をうけません。そして、出産ぎりぎりになってから救急車を呼ぶためにこのような事態が発生するのです。そして無事に出産すると、多くは費用を踏み倒して退院してしまいます。

 医師法19条に医師の応召義務というのが定められており、医師は診療を依頼されると、正当な理由なしには断れません。特に救急医療機関が理由なく救急車を断ると、医師法に抵触するおそれがあります。また、無理やり医療費を取り立てることは倫理的にできません。妊婦はこれを利用して、"ただ乗り"しているわけです。

 妊婦検診をうけずにいきなり出産すると、母子ともにリスクが高くなることが知られています。救急搬送先を探すシステムだけを作っても、異常分娩や胎児の異常が増えることは止められません。妊婦がきちんと検診を受けられるようにするのが、本来の望ましい解決方法です。

 米国の周産期死亡率は高く日本の3倍くらいですが、貧困層や無保険者の多いことがその一因と考えられています。このままですと、日本も米国に近づいていく可能性があります。


おすすめの本

医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か

アメリカ医療の光と影―医療過誤防止からマネジドケアまで

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  1. 2007/11/03(土) 22:58:22|
  2. 医療崩壊
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逆選択の回避-国民皆保険

 日本の医療制度の大きな特徴は、国が管理するほぼ強制的な国民皆保険制度になっていることです。

 国民皆保険制度は、逆選択の問題が回避できるのが最大の利点です。保険者、被保険者ともに相手を選ぶことができないからです。もう一つの利点は、宣伝や保険加入者の審査などが不要なので、取引コストが安いことです。さらに、政府が医療行為に対する給付額を抑制することもできます。日本の医療制度が世界一コストパフォーマンスがよいのは、これらのためです。

 ただし、国民皆保険には所得移転がともないます。保険料が一定だと、健康なひとには割高に、体の弱いひとや病気を持っているひとには割安になるので、前者から後者へ所得が移転することになります。

 社会的強者から弱者への所得移転は、一般的には好ましいと考えられますが、そうではないという意見もあります。特に、被用者の保険料を半分負担している民間企業は、保険料の負担増によって企業のコストが増え、国際競争力が阻害されると主張しています。また高額所得者の中には、負担が高くてもよいから金額に見合った医療がうけたい、というひともいます。

 また、国民皆保険でもモラルハザードは解決できません。従って、自分自身の健康管理に対するインセンティブが低下したり、過剰な診療が行われたりすることによって、医療費の増大を招く可能性が否定できません。

 
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  1. 2007/11/06(火) 10:47:13|
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医療の市場化と生存権

 生存権は最も基本的な人権の一つであって、経済的理由などによって人命が左右されるべきではない、というのは、程度の差はあっても、現代の先進諸国における共通の考え方になっています。

 日本国憲法第25条(→wiki)にも、国民の生存権と国の社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上および増進に対する使命が明記されており、議論の余地はありません。

 医療はしばしば人命に直結するため、これを市場化することは生存権を脅かすことになるのでそもそも誤っている、という考え方があります。
 一方、医療の中で人命にかかわる部分は、それほど多くはない、むしろ患者の自由を尊重して、負担ができる患者はより高度のサービスを受けられるようにするべきだ、という意見もあります。

 つまり、基本的人権である生存権個人の自由は、場合によって相反する可能性があるということです。

 理念に関する問題に、簡単・明瞭な結論は出ません。国によっても考え方にある程度の相違が見られ、これが医療制度社会保障制度全体にも反映されています。

 いずれにせよ、医療の市場化生存権よりも個人の自由に重きを置くことを意味するのは間違いありません。

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  1. 2007/11/08(木) 01:19:41|
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混合診療の禁止は違法?

 2007年11月7日,東京地裁は”混合診療に対して保険の診療報酬を支払わないのは違法である”、という判決を出しました。

 混合診療というのは、公的な健康保険による保険診療と、保険適応外の自費診療を同時に行うことです。

 これまでは、保険で診療を受けている場合、個室料金や特別の食事などの療養環境にかかわるものに限って、別途に自費料金を請求することが認められてきました。しかし厚生労働省は、疾病の診断・治療という、医療の本体にかかわる部分については、先進医療と呼ばれる一部の例外を除き、自費診療の併用を認めませんでした

 混合診療が法律で禁止されているわけではありませんが、自費診療を併用した場合には保険の診療報酬を支払わなかったのです。

 厚生労働省や日本医師会は、混合診療を認めると、”一つの保険に国民全員が加入する”という現在の国民皆保険制度が崩れて、制御不能になることを恐れています。

 これは杞憂ではなく、一旦混合診療を認めれば、医療費が制御不能になるとともに、逆選択の問題が起こることはほぼ確実です。なぜならば、民間保険が診療そのものを対象とすることになると保険者が複数になり、市場原理が導入されるからです。

 おそらくは、瞬くうちに米国と同様の状況に陥り、国民皆保険制度は形骸化して、医療崩壊に向かうでしょう。

 米国の状況については下記をご覧ください。

アメリカ医療の光と影―医療過誤防止からマネジドケアまで

 

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  1. 2007/11/08(木) 10:46:38|
  2. 医療崩壊
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福祉国家レジームと日本の社会保障制度


 1990年にエスピン・アンデルセンというデンマークの社会学者が、福祉国家クラスター分析により3つに類型化し、福祉国家レジーム(→wiki)という概念を提唱しました。
 様々な異論はあるものの、現在でもこれが社会保障制度を考えるうえでの基本になっています。

福祉資本主義の三つの世界 (MINERVA福祉ライブラリー)

 分類の主な要素として、社会権の脱商品化(社会権が市場経済から分離されている度合い)、社会的階層化(社会政策によりどのような階層化が行われているか)が用いられ、また類型は雇用に大きく影響することが示されています。

 社会民主々義型福祉国家レジームは、スウェーデンやデンマークなどの北欧諸国に見られるものです。同一労働同一賃金完全雇用が原則で、最も脱商品化の程度がくなっています。社会福祉や雇用は政府により提供されますが、維持するのに膨大な財政負担を要し、、国民負担率は高くなります。社会福祉部門の公務員として、多くの人員が雇用されています。

 、自由主義型福祉国家レジームは、米国などに見られるものです。労働者も市場原理に委ねられているため、脱商品化の程度はくなります。福祉は市場から個人の負担能力に応じて提供され、社会福祉や雇用に対する国家の介入は貧困層などに対し最小限にとどめるため、国民負担率は低くなります。

 保守主義型福祉国家レジームは、ドイツなどの欧州大陸諸国にみられるもので、家庭職域集団が福祉を提供し、政府は不足部分に対する補完的保障を行います。脱商品化は中等度とされています。職域労働組合に加入している労働者は保護されますが、それ以外は排除されるため、失業率が高くなります。
 また、国家が政策を主導する国家主義国家コーポラティズム(職域集団が高度に組織化され、さらに国家に統合された全体主義的体制)が見られます。このような国家では、公務員の地位が高く、特権的福祉を受けているのが特徴です。

 日本や韓国などは血縁による影響度が高く、これらの類型とは異なるという意見もありますが、基本的には保守主義型の福祉国家レジームに近く、自由主義型のレジームの要素も持っていると考えられます。


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  1. 2007/11/10(土) 15:29:25|
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スウェーデンの医療・年金改革と日本の改革

 先進国の経済成長率が高い間は、いずれの福祉国家レジーム前のページ)もよく機能していました。しかし、その後の経済成長率鈍化や社会の高齢化などにともなって、様々な問題が生じてきました。

 スウェーデン医療制度では、社会民主主義型レジームにつきもののモラルハザードによる弊害のため、社会的入院(不必要な長期入院)が非常に多くなって財政を圧迫するなどの問題が生じました。その結果、1992年にエーデル改革と呼ばれる医療制度改革が行われました。

 エーデル改革の骨子は、医療政策の地方自治体への分権化、高齢者医療における看護師の責任・権限の強化在宅医療グループホームなど)へのシフトです。
 
 現在日本の厚生労働省が計画している医療制度改革も、基本的にはこれと同じものです(詳細はこちら)。

 問題は、財務省自民党の新自由主義者社会保険料を値上げせずに、医療費の圧縮増税(おそらくは消費税)、後期高齢者の自己負担増を財源として考えている点にあります。国の財政赤字と、小泉改革による自由主義型レジームへの方向性があるためです。

 消費税増税による需要の減少経済成長が鈍化し、一方医療費圧縮による医療の過少供給人材の流出、所得逆進的な自己負担増などが加わって、かなり悲惨な状況になる可能性が高いと思われます。

 また、自由主義型レジームを信奉する経済財政諮問会議などの圧力で混合診療を認めれば、一気に医療崩壊が進行するでしょう(混合診療)。

 スウェーデンでは、年金についても、社会の高齢化に伴って財政が悪化し、世代間の負担格差が拡大するなどの問題が生じました。約10年の長い議論を経て、1999年に公的年金制度の改革が行われました。

 この方式の骨子は、積み立て式年金とする、保険料率を所得の18.5%に固定する(所得比例年金)、というものです。

 日本も、国民全体に対してある程度の公的年金水準を維持するのであれば、概ねこの方向で行くしかないのですが、既に支払った保険料の扱いが難しい、高齢化の速度が速く世代間格差が著しい、社会保険庁への不信、などの課題があり、簡単ではありません。

 さらに、職域単位の年金を統合したうえで、年金保険料を値上げする必要があるため、国民が保守主義型から社会民主主義型へのレジーム転換に合意しないかぎり、実現はかなり困難と思われます。

 いずれにせよ残された時間は少なく、年金を政治課題にして与野党がにらみ合っている暇はありません。

 まずは社会保障の専門家が十分に議論したうえで、国民にわかりやすく状況を説明することが重要です。

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  1. 2007/11/10(土) 22:09:49|
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少子化と福祉国家レジーム-医療制度改革

 先進諸国の中でも、欧州(特にイタリアなどの南欧)、日本、韓国などでは、急速に少子化が進行しています。

 これには様々な要因が関わっていますが、福祉国家レジームも大きく影響していると思われます。

 社会民主主義型レジームでは完全雇用が原則ですので、基本的に女性も就業します。そのかわりに育児、教育、介護などは社会全体で保障するため、出産・育児に大きな支障はなく、少子化が起こりにくいのです。
 もちろん、スウェーデンの女性は社会福祉関係の公務員に多く、民間企業の管理職には少ない、などの問題はありますし、伝統的な家庭が成り立たなくなることが長期的にどう影響するかはわかりません。

 一方、保守主義型レジームでは、家族職域集団を単位として福祉が提供されます。職域集団の主な構成員は男性の正職員でそれ以外は排除され、女性は家庭における育児や介護の要員となることを期待されるため、社会進出が阻害されます。このような状況が、晩婚化出生率低下を招き、少子化の大きな原因になっています。
 家庭を重視する原因として、東アジアでは儒教が、南欧ではカソリックが影響していると思われます。
 また、ドイツやフランスのように少子化に伴う労働力不足を外国人に依存すると、既存の職域集団に帰属しない労働者が増えてしまうために社会の二重構造化が起こり、不安定になります。

 自由主義型レジームでは労働市場が発達して雇用の流動性が高く、その理念から職域集団による分断は起こりにくいと思われます。米国では、政府の積極的な介入もあって女性マイノリティの社会進出は著しく、また多くの移民を受け入れているため、出生率は落ちていません。

 少子化高齢化を加速します。また女性の社会進出が遅れると、労働力の利用が非効率になり、国の生産性向上を阻害する可能性があります。

 このままの状況では、さらに少子高齢化が進行し、いずれは経済成長が困難になると想定されることが、保守主義型福祉国家レジーム転換が避けられない、と考えられる理由の一つです。

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  1. 2007/11/11(日) 13:36:30|
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医療はどのような財か-公共財、私的財、価値財

 医療制度は公共的なものと言えるのでしょうか。

 一般に、公共財私的財は次のような基準で分けられています。
 1. 利用者を排除することが可能かどうか(排除性)。
 2. 利用者が増えた時に、追加コスト(限界費用)がかかるかどうか(競合性)。
 利用者の排除が不可能(非排除性をもつ)で、かつ利用者が増えても追加コストが全くかからない(非競合性をもつ)ものは、純粋公共財と呼ばれ、教科書では国防外交などが該当するとされています。純粋公共財は、市場にまかせると過少供給になるため、必要に応じて政府が税を用いて維持しなければなりません。

 一方、利用者を排除可能で、かつ利用者が増えると追加コストがかかるものが私的財です。私的財は、市場に委ねることによって効率的に供給されます。 

 非排除性・非競合性のうち、どちらかの性質をある程度もつものは、公共財(広義の公共財)と呼ばれています。準公共財には、道路や港湾、水道辞表など様々なバリエーションがあります。準公共財は民間、政府いずれも供給することが可能です。

 以上の性質とは別に、財に社会的な意味合いがあるかどうか、という基準があります。社会的に価値のあるものは価値財(メリット財)、マイナスの価値があるもの(麻薬など)は負の価値財と呼ばれています。

 医療や教育は、基本的には私的財としての性質を持っていますが、社会的な価値があるので価値財(メリット財)であり、ある程度公共性があるものと考えられます。

 価値財がどのように供給されるかは、個々の利用者ではなく、社会全体にとってどのような効用が期待できるか、によって決まります。従って、民主主義国家では、国民の総意としての価値判断が最も大きな影響を与えます。


  これまで述べてきた経済面からの医療に対する考え方を整理すると、次のようになります。

 1.医療は私的財なので、市場で供給するのが最も効率的である。ただし、情報の非対称性によって様々な問題が生ずるので、政府の介入が必要である。

 2.医療は社会に有益な価値財であるため、公共性がある。政府がどこまで関与するかは、医療の社会全体への効用に対する国民の総意で決まる。

 3.我が国においては、少なくとも国民の生存権は保障されなければならない。


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  1. 2007/11/13(火) 08:34:18|
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医療崩壊はこれからです(1)-米国の救急医療

  日本の医療崩壊は今始まったところで、問題は今後です。
 
 救急医療、小児科などの、リスクが高く、かつ効率の悪い(従って給与や労働条件の悪い)診療科が、産科僻地医療に続いて崩壊するものと考えられます。

 米国では、1980年代に無保険者と貧困層が増加し、救急医療と急な出産に問題が生じました。

 無保険者や貧困で医療費を払えない患者は、日中でも救急外来しか行くところがありません。しかし、このような患者を受け入れると、病院は診療費を取りはぐれることになるため、たらい回し(転院)やきちんとした診療の拒否(patient dumping):が頻発しました。

 小規模な民間病院は経営が成り立たない救急医療から手を引き、行き場のない患者は、主に州や群などの経営する公立病院へ集中することになりました。

  これに対して、”1986年の救急治療と出産に関する法律(Emergency Medical Treatment and Active Labor Act of 1986 (EMTALA))”、という連邦法が成立し、メディケア(米国の高齢者用公的医療保険)の対象病院に対して、救急患者と急な出産の受け入れと、病状が安定するまでの治療が義務付けられました。
 
 日本の大きな救急病院が1年間に扱う患者数は2万人程度ですが、患者が集中する米国の都市部では7万人くらいが普通です。このため待ち時間が長くなり(平均6時間というところもあります)、待っている間に亡くなる人が出てくるため、来院患者をスクリーニングして、重症患者には速やかな処置を行い、軽症であれば最低限の治療をして帰宅させるシステムが必要になります。

 こうしてテレビでお馴染みのER救急医が確立し、急速に広がっていったわけです。

 米国東海岸のダウンタウンにある某州立大学付属病院の管理者によると、現在ER受診患者で医療費が払えるのは20%くらいで、あとは税金で補填されるとのこと。

 このように市場原理の米国でも、救急医療や急な出産には法律による規制が行われ、またかなりの部分が税金でまかなわれて、何とか維持されています。
  
 医療保険の一元化ができれば、このうちかなりの部分を保険による一般診療にシフトできると考えられるため、民主党のクリントン議員は時期大統領選挙の目玉にしています。

 日本は、同じ道を逆行していく可能性があります。最近では、地域の救急医療機関が救急医療から撤退し、救急患者が一極集中する傾向が出てきています。

 きちんとした法律の制定や財源の確保が必要なはずですが、現状ではかなり困難でしょう。

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  1. 2007/11/14(水) 17:25:21|
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