医療 社会福祉 経済

医療や介護、年金などの社会福祉政策と経済との関係は、国家の根本にかかわる大きな問題です。また、高齢化と経済成長の鈍化が見られる先進国に共通の難題でもあります。制度をどのように改革すべきか考えましょう。

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医療の特性-医療の市場化1

 それでは、まず医療を市場化するのがなぜ難しいのか、について考えてみましょう。

 医療には、たとえば自動車や洋服を購入するといった通常の経済行為とは大きく異なる面がいくつかあります。

 ① いつ、どれだけ必要になるのか予測できない
 ② 医療者と患者の情報量の相違
 ③ 必要な時に手に入らないと、命にかかわることがある。

 凍え死ぬような状況は別として、洋服は欲しい時に気に入ったものを予算にあわせて買う、ということで大きな問題はおこりません。収入や状況に応じて計画的に購入することもできますし、お金がなければ、安物や古着でもとりあえず何とかなります。
 一方、怪我や病気にいつ襲われるかを事前に予測することは困難です。どのような病気になるかもわかりません。医療の必要性は、予想できないリスクによっているところが、洋服の購入とは大きく異なっています。

 このような予測できないリスクに対応するためには、相互扶助や保険のような、何らかの仕掛けが必要になります。

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テーマ:政治・経済・時事問題 - ジャンル:政治・経済

  1. 2007/10/23(火) 23:42:50|
  2. 経済と医療制度
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相互扶助と保険-医療の市場化2

 古くから行われている相互扶助のひとつに、"家族内の助け合い"があります。子供が熱を出したのでお母さんが看病する、というのは当然ですし、夫婦間での助け合いも必要です。このような家族内の相互扶助は、我が国の民法でも義務付けられています。

 家族よりももう少し範囲の広がったものに、ご近所の助け合い、同じ会社内や組合内での助け合い、ボランティア組織や宗教団体による助け合いなどがあります。これらは、基本的には何らかの"共同体における相互扶助"であることが特徴です。自然発生的に出来上がってきたものに加えて、共同体内部に掟や規則があったり、法律に基づくものなど、様々な形態があります。

 相互扶助の特殊な形態として、保険というシステムがあります。構成員が保険料という名目で一定の金額を支払うと、リスクが現実化した場合に所定の保険金が還付される仕掛けです。リスクを構成員全員に分散すると、構成員の数が大きくなるに従ってリスクの変動が一定範囲内に収まっていくという性質(大数の法則)を利用したものです。
 前にのべた共同体の相互扶助なども、基本的には同じ原理によっているのですが、保険金銭を媒介にしており、また契約としてきちんと整理されているのが特徴です。
 あたりまえですが、保険金は保険料を払い込んでいるものにしか支払われません。また、払い込まれる保険料の総額が支払う保険金の総額とおおむね等しくなるように設計され、現実にそう運用されていなければ成り立ちません。

 最も大規模な、国家による扶助システムは社会保障と呼ばれています。これには、大きく分けて保険のシステムを用いたもの(社会保険)と税金を使って国の政策として行うものがあり、国の関与の仕方にも直接的なものと間接的なものがあります。また、社会保険の支払い方法には、金銭による給付と現物給付(医療や介護そのものを行う)とが行われています。

 なお、現在の日本の医療は国に管理された保険制度が骨格になっており、主に社会保険料で成り立っていますが、保険料のうち1/4程度は税金によってまかなわれています。

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  1. 2007/10/24(水) 10:25:05|
  2. 経済と医療制度
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情報の非対称性-医療の市場化3

 次の大きな問題は、医療者と患者あるいは保険者と加入者など、関係者間の情報量の相違です。これは、情報の非対称性と呼ばれており、取引の片方が、もう一方よりも多くの情報を保持している場合には、情報を多く持つほうが有利になって、取引が非効率になることがわかっています。

 通常の場合、医師や医療機関は、問題となる病気や治療法などに関して患者本人よりも多くの情報を持っています。このため、市場原理のもとでは、患者が不利益をうける可能性があります。あまり有効でない投薬や検査が行われたり、必要だが手のかかる治療が行われない、などが起こりえるということです(モラルハザード)。市場原理から言えば、医師は合理的な行動をとっているにもかかわらず、患者が不利益をうけるわけです。

 こういう現象が起こったり報道されたりすると、患者は医療機関を信用できなくなるので、医療機関に対する評価が下がります。つまり、医療機関は実際の価値よりも過小評価されるわけです。その結果、必要があっても患者が受診をしなくなったり、まともな医者が転職してヤブ医者だけ残り、最終的にはシステムが機能しなくなることがあります。
 また、民間保険会社が加入者の健康状態を全く知らずに医療保険に加入させると、病気持ちばかりが集まって、想定よりも保険料の支払いが増えて保険が破綻してしまうことがあります。

 これらの現象を逆選択(adverse selection)あるいは逆淘汰と言い、情報の非対称性によって起こる重大な問題の一つです。

 また、一旦保険に入ってしまうと、事前の想定よりもリスクが現実化しやすくなる、という保険者-加入者間のモラルハザードも起こります。医療保険に加入すると健康状態に留意しなくなり、病気になる確率があがる、ということです(わざと病気になるのではなく、合理的な行動の結果そうなる)。また保険に」入っていると、軽い病気でも医療機関を受診しやすくなる、という現象もモラルハザードの一種です。これらも、保険者よりも加入者の持つ情報量が多いことに起因しています。

 医療者と患者の情報量の格差に対する対策として、次のようなことが行われています。
 1. 医師ができるかぎり複数の治療法を提示し、患者が選択できるようにする(SDM)。
 2. 医師に示された治療方針について、患者が他の医療機関の意見を求められる制度(セカンド・オピニオン)。
 3. 第三者による医療機関の評価。

 保険者と加入者間の情報の非対称性に対しては、加入者がなるべくランダムに選ばれるようにしたり、審査を厳しく実施するなどの方法があります。

 モラルハザードに対しては、保険で損害の全額を補填せずに、一部を自己負担させる方法(免責)が一般的です。

 しかしながら、このように様々な対策がとられても、情報の非対称性を完全に解決することは難しいのが現実です。
 

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  1. 2007/10/24(水) 22:03:18|
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リスク回避 保険 期待効用-医療の市場化4

 今までの内容を整理すると、次のようになります。
 
 1.医療制度の本質は、”リスク回避”である。
 2.リスクを多数に分散することにより、その変動を減らして一定範囲内に制御することができる(大数の法則)。
 3.保険は、金銭と契約を用いたリスク回避法の一つである。
 4.取引の関係者が持っている情報量に偏りがあると、市場原理のもとでは効率的な取引に支障が生ずる。

 つまり、医療を市場化しようとする場合には民間保険が中核的な役割を果たし、また情報の非対称性が重大な問題になることがわかります。


 ところで、医療保険が事業として成り立つためには、取引によって保険会社と加入者の双方が利益を得られなければなりません。この点を検討しておきましょう。

  リスクは分散することによって一定範囲に制御できることは前に述べたとおりです。

 それでは、保険が何故利益を生むかというと、”貧乏人の1万円は、大金持ちの1万円よりもずっと価値がある”という原理によっています。

 急性心筋梗塞になると、200万円の医療費がかかるとしましょう。そして、その人が心筋梗塞になるリスクが1年につき1%であったとします。
 そうすると、この人の心筋梗塞による1年間の平均的なリスク(期待値)は200万円X0.01の2万円です。従って、公正な保険料は年2万円と考えられます。

 年収300万円の人にとって200万円の出費は大変なリスクですが、年収3億円のお金持ちには大した金額ではありません。そうすると、このリスクを2万円よりもやや高い値段(たとえば2万1千円)で売買する契約が成立する可能性が高いのです。

 お金持ちは、同じような契約をたくさん結ぶことによってリスクを一定範囲内に押さえ、利益を得ることができます。
 それでは、年収300万円の人は不利益をこうむったのかというと、そうでもありません。可処分所得が297万9000円に減るよりも、1%の確率で100万円になってしまう不確実性(リスク)を回避できることのほうが、価値があると判断しているからです。

 もちろん、リスクに対する価値観は人によって異なりますし、保有資産など他の要素にも影響されます。
 
 しかしながら、一般的には"使えるお金の額が増えるに従って、その人にとってのお金1単位あたりの価値が下がる"、という関係(限界効用逓減の法則)が見られるために、保険は成り立っています。

[リスク回避 保険 期待効用-医療の市場化4]の続きを読む

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  1. 2007/10/25(木) 19:07:06|
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情報格差-産科医療の崩壊1

 ここで、最近社会問題になりつつある、産科医療の崩壊について、考えて見ましょう。この問題は、産科医が次々とお産をしなくなり、あるいは廃業して、生む場所がなくなっている、という現象です。

 正常の分娩・妊娠は病気ではないので、日本では社会保険の給付対象とはなっていません。従って、我が国では珍しい自由診療(自費診療)が行われています。ただし、組合や自治体などから出産見舞金のようなものが支給されて、一部は補填されますし、母子に異常があれば、疾病として社会保険や助成金の給付対象になります。

 産科医療は、基本的には市場原理のもとで運用されているのですから、今回起こっている現象は医療の市場化を考えるうえでの、よい実例になります。


 出産は本来危険なものです。日本の妊産婦死亡率および周産期死亡率は世界最低水準(つまり医療水準は世界最高レベル)ですが、それでも出生10万件あたり4,4名の妊産婦が死亡し、周産期死亡(死産もしくは早期新生児死亡)は出生1000件あたり3.3件にのぼっています。

 ところが、両親は出産のリスクをそれほど強くは認識していません。また出産にかかわる無過失保険もありませんので、出産にかかわるトラブルは訴訟になりやすいのです。ただし、異常分娩の医療費は保険などで充当されます。    

 このように、両親と医師との間でリスクに関する認識の相違があることが、第一の問題点です。

 妊婦検診などで事前に異常が指摘されている場合には、主治医も十分な説明ができますし、両親にも受け入れる時間があります、しかし、突然に起こった異常では、このような時間的猶予はありません。また、選択肢も限られたものになります。

 事態が緊急的であるほど、両者の持つ情報の格差は大きくなり、これを解消する手立ても限られてくるわけです。

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  1. 2007/10/29(月) 22:12:45|
  2. 医療崩壊
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