医療 社会福祉 経済

医療や介護、年金などの社会福祉政策と経済との関係は、国家の根本にかかわる大きな問題です。また、高齢化と経済成長の鈍化が見られる先進国に共通の難題でもあります。制度をどのように改革すべきか考えましょう。

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救急医療の公共性

 医療公共財ではなく価値財とされていますが、救急医療にはやや異なる面があります。(以前のページ参照)

 現在の日本では、交通事故で動けなくなっても、誰かが119番に電話をすれば、速やかに救急車がやってきて病院へ収容されます。このようなシステムは、自然にできたものではなく、18世紀末にフランスの軍医ラーレーによって考え出されたものです。

 もともと怪我や急病への対応は当事者の責任であり、家族帰属集団内の相互扶助によってある程度支えられていました。また動けない戦傷者の多くは戦場に放置されて死亡するのが普通でした。これに対して、ラーレーは戦傷者を救出して治療を行う軍事システムを考え出し、ナポレオンが部隊として組織化したのです。

 馬に乗った軍医と衛生兵、そして救急車(馬1頭が引く軽量の2輪馬車)からなる機動性の高いチームを多数編成し、このチームが戦場を駆け回って戦傷者を1箇所に集めます(迅速な搬出)。そして、医療用資器材や軍医などをここに集中します(医療資源の集中)。さらに、集積した傷病者を選別して治療優先度の高いものから治療を行っていきます(トリアージ)。

 このシステムが効率よく機能したため、ラーレーの部隊はワーテルローでナポレオンが破れるまで、全ての会戦に参加しています。

 世界各国の軍隊は次第に類似の部隊を編成し、また現在までに装備は大幅に近代化されてきましたが、救急医療システムのコンセプトはラーレーの時代と全く同じです。

 第二次世界大戦終了後に、先進諸国では自動車が爆発的に増加し(モータリゼーション)、同時に交通事故急増しました。、これに対して、ラーレーのシステムが平時社会システムとして導入され、その後、急病に対しても対応すべく拡大されて現在に至っています。

 救急医療システムに一部公共財としての性質があるのは、非排除性を伴うためです。

 戦傷者はもちろん、交通事故による重症外傷や道端で倒れた急病人を対象にする場合、任意の傷病者をシステムから排除するのは困難です。このため、救急医療システムの多くは公共セクターが担当し、税金などでまかなわれています。

 ただし、平時における救急医療システムの限界費用はゼロではありません。

 一旦公共の救急医療システムができると、モラルハザードや”ただ乗り"による過剰供給がおこり、コストが膨れ上がる、という問題があります。
 
 ラーレーの考案したシステムは、医療資源の効率利用の原則を示しています。中でも選別(トリアージ)は、非効率性の解消に対して有効な手段ですが、我が国では主に政治的な理由で行われてきませんでした。

 つづく
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  1. 2007/12/02(日) 01:31:58|
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救急医療と安全保障

 国の安全保障とかかわりがある点も、救急医療システム特徴の一つです。

 テロ軍事攻撃だけでなく、地震などの自然災害大規模事故の事故、新型インフルエンザのような強力な伝染病への対応など、様々な状況で救急医療システムが必要になります。

 これらは、滅多に起きないことに対応するものであり、普段はあまり実務を行っていません。従って、非排除性に加えて、カバーする人口が多少増えても費用はほとんど増えない限界費用が低い)という、公共財の性質を持っています。このため、市場にまかせると過少供給になります。

 2005年に米国南部沿岸を襲ったハリケーンのカトリーナに対して、充分な初期対応行われなかったことはよく知られていますが、ブッシュ政権が、連邦危機管理庁FEMA)の権限を縮小したのが原因の一つといわれています。

 もちろん公共的救急医療システムへの依存は最小限にとどめ、安全保障には関係がなく、また非排除性に乏しいもの(軽症や慢性の病気で通院中など)は、通常の医療と同じ基盤で扱うのが適当です。

 しかしながら、この境界曖昧であり、また誰の責任選別を行うかを決めまければなりません。

 つづく

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  1. 2007/12/02(日) 14:22:49|
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救急医療システムの課題(1)-医療資源の集中と迅速な搬送

 救急医療では、厳しい時間的・空間的制約をともなうため、医療資源効率的利用が不可欠です。
 
 致死的な外傷では、時間とともに救命できる確率が急速に減少してしまいます。急性心筋梗塞などの重篤急病でも、同じ傾向が見られます。従って1分でも早く治療を開始しなければなりません。

 一方、事故や災害は定期的に起こるものではなく、その規模にも大きなばらつきがあります。常時最悪状況に備えた準備をすると、多くの人員・設備が遊んでしまうことになるため非効率です。逆に準備がひどく過少だと、いざという時に対応ができません。事が起きてから手配をしても、時間・空間的制約のため手遅れになってしまうからです。

 この問題は、古来担当者を悩ませてきました。

 解決法の一つは、医療資源傷病者をできるだけ少ない箇所に集中することです。大数の法則によってばらつき平準化され、また繰り返しにより習熟度が高くなるため、効率が上がります。

 また、傷病者を一定時間内に一箇所へ集中するには、迅速な搬送が不可欠です。搬送手段の速度地勢的制約によって、その救急医療システムが有効に稼動できる空間的限界が決まります。

 都市部のように、傷病者の空間的発生密度高く、高い山などの障害がない場合には、自動車救急車)による迅速な搬送が可能です。

 一方、人口密度が低く、広い面積を対象とする場合や、島嶼・山岳地帯のように交通上の障壁がある場所では、搬送手段航空機船舶などを用なけれななりません。

つづく

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  1. 2007/12/16(日) 17:34:58|
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救急医療システムの課題(2)-トリアージ

 救急医療では、緊急に治療が必要でかつ治療効果が見込める傷病者に、限られた医療資源優先的に振り向けなければなりません。このために、集めた傷病者を症状などによって選別トリアージ)し、治療優先度を決定します。(wiki→

 特に、災害のように傷病者の規模に対して利用できる医療資源全く不足している場合、トリアージは重要な役割を果たします。

 ただし、トリアージには精度および倫理の問題が伴います。

 トリアージは短時間で迅速に行うものであり、傷病者を詳細に診察し検査をしたうえで診断することはできません。従って、一定の確率で重症が軽症に選別されますし、またその逆も起こります。

 一般的に、選別基準厳しくして重症に選別する人数を少なくするほど、重症を軽症と誤る確率くなります。逆に、基準を緩くして重症に選別する人数が増えるほど、軽症が多く含まれるようになります。いずれにせよ、トリアージの精度には限界があり、100%の精度は望めないということです。

 トリアージにおけるもう一つの問題が、最重症者の選別における倫理問題です。

 傷病者数が少なく充分な医療資源が得られる時には、救命可能性が非常に少なくても、重篤な傷病者が最も治療優先度が高くなります。一方、明らかに傷病者数が医療資源を上回っている場合(地震などの大災害)には、治療によって救命できる可能性の高い傷病者優先され、重篤すぎる傷病者の治療優先度は低くなります。

 このように選別基準状況によって変化するため、異論が生ずる余地があります。

 最も重篤な傷病者の治療優先度を下げるということは、死の宣告に等しい面があり、一般的な倫理規範するため、トリアージを行う者に強い心理的ストレスを与えます。さらに、その判断の適否を巡って後から責任を追及されることさえあります。

 最大数の生命救うために、全ての命を救う努力放棄する、という決断を同じ人間に迫ること自体の倫理的妥当性に関する命題とも言えます。

 救急医療システム効率化するためには、以上の課題に充分留意をしつつトリアージの概念を導入しなければなりません。

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  1. 2007/12/20(木) 19:11:28|
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