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医療 社会福祉 経済

医療や介護、年金などの社会福祉政策と経済との関係は、国家の根本にかかわる大きな問題です。また、高齢化と経済成長の鈍化が見られる先進国に共通の難題でもあります。制度をどのように改革すべきか考えましょう。

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情報格差-産科医療の崩壊1

 ここで、最近社会問題になりつつある、産科医療の崩壊について、考えて見ましょう。この問題は、産科医が次々とお産をしなくなり、あるいは廃業して、生む場所がなくなっている、という現象です。

 正常の分娩・妊娠は病気ではないので、日本では社会保険の給付対象とはなっていません。従って、我が国では珍しい自由診療(自費診療)が行われています。ただし、組合や自治体などから出産見舞金のようなものが支給されて、一部は補填されますし、母子に異常があれば、疾病として社会保険や助成金の給付対象になります。

 産科医療は、基本的には市場原理のもとで運用されているのですから、今回起こっている現象は医療の市場化を考えるうえでの、よい実例になります。


 出産は本来危険なものです。日本の妊産婦死亡率および周産期死亡率は世界最低水準(つまり医療水準は世界最高レベル)ですが、それでも出生10万件あたり4,4名の妊産婦が死亡し、周産期死亡(死産もしくは早期新生児死亡)は出生1000件あたり3.3件にのぼっています。

 ところが、両親は出産のリスクをそれほど強くは認識していません。また出産にかかわる無過失保険もありませんので、出産にかかわるトラブルは訴訟になりやすいのです。ただし、異常分娩の医療費は保険などで充当されます。    

 このように、両親と医師との間でリスクに関する認識の相違があることが、第一の問題点です。

 妊婦検診などで事前に異常が指摘されている場合には、主治医も十分な説明ができますし、両親にも受け入れる時間があります、しかし、突然に起こった異常では、このような時間的猶予はありません。また、選択肢も限られたものになります。

 事態が緊急的であるほど、両者の持つ情報の格差は大きくなり、これを解消する手立ても限られてくるわけです。

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  1. 2007/10/29(月) 22:12:45|
  2. 医療崩壊
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報道と信用毀損-産科医療の崩壊2

 医療機関や医師と患者の間には情報の格差があるため、医療機関の評判ブランドが両者の関係に大きく影響します。評判は、患者が医療機関を信用するかどうかの判断基準の一つになるでしょうし、医療機関にとっては質を厳重に管理して、信用を維持するインセンティブになります。
 
 しかしながら、一旦信用を裏切るようなことが行われたと報道されると、評判やブランドが逆に悪いシグナルを送るようになるため、医療機関は大きなダメージをうけ、場合によっては存続できなくなります。

 悪質な医療機関が淘汰されたり、明らかな過失によって生じた損害が保証されるべきなのは当然です。しかし多くの場合、報道は事実の検証が十分行われる前になされるため、否定的な評判がたつと、過失の有無にかかわらず、その時点で信用は毀損されてしまいます。さらに、一旦低下した信用を取り戻すのは容易なことではありません。
 
 このように、リスクの高い医療を行うと、確率的に予測される事故のリスクよりもずっと大きな信用毀損リスクを負うことになり、一般的な損害賠償保険ではこれを回避できないのです。

 さらに、事故に遭遇した医師個人が警察に逮捕され、大きく報道されるというような事態にまで至ると、産科医は地雷原を歩いているような状態になります。大野病院事件産科医にとって衝撃的であったのは、このような事情によります。

 人員が少なく専門医や高度医療機関によるサポートが受けにくい地方の病院から産科医がいなくなってしまったのは、このような病院での診療は、信用を毀損するリスクが特に高いためです。

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  1. 2007/11/03(土) 21:32:11|
  2. 医療崩壊
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検診をうけない妊婦-産科医療の崩壊3

 ”救急車が破水した妊婦を搬送しようとしたところ、収容先を探すのに3時間以上かかって流産した”、という報道がありました。このような状況には、産科医が不足しているということ以外に、別の要素がかかわっています。

 出産は突然するものではありません。女性が妊娠すれば、普通の場合は産婦人科を受診します。そこで妊娠か否かが診断され、正常妊娠であれば、その後は定期的に妊婦検診が行われます。従って出産の際には、通院中の産科へ連絡すれば適切に対応がなされます。
 周産期救急医療システムは、産科の医療機関と異常分娩などを扱う高度医療機関の間のネットワークによって形成されており、一般の救急医療システムとは別のものです。医療機関を受診していない妊婦が出産のため救急車を呼ぶ、というのは異常なことなのです。

 これまでも、未成年の妊娠や検診の習慣がない外国人などが、突然のお産のため救急車搬送されることはありました。最近の特徴は、所得が低くて出産費用を払えないために検診を受けない妊婦が増えていることです。

 正常なお産は疾病ではないので、健康保険の対象外です。おおむね数十万円の自費負担が必要になるため、これを払えない妊婦は検診をうけません。そして、出産ぎりぎりになってから救急車を呼ぶためにこのような事態が発生するのです。そして無事に出産すると、多くは費用を踏み倒して退院してしまいます。

 医師法19条に医師の応召義務というのが定められており、医師は診療を依頼されると、正当な理由なしには断れません。特に救急医療機関が理由なく救急車を断ると、医師法に抵触するおそれがあります。また、無理やり医療費を取り立てることは倫理的にできません。妊婦はこれを利用して、"ただ乗り"しているわけです。

 妊婦検診をうけずにいきなり出産すると、母子ともにリスクが高くなることが知られています。救急搬送先を探すシステムだけを作っても、異常分娩や胎児の異常が増えることは止められません。妊婦がきちんと検診を受けられるようにするのが、本来の望ましい解決方法です。

 米国の周産期死亡率は高く日本の3倍くらいですが、貧困層や無保険者の多いことがその一因と考えられています。このままですと、日本も米国に近づいていく可能性があります。


おすすめの本

医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か

アメリカ医療の光と影―医療過誤防止からマネジドケアまで

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  1. 2007/11/03(土) 22:58:22|
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医療の市場化と生存権

 生存権は最も基本的な人権の一つであって、経済的理由などによって人命が左右されるべきではない、というのは、程度の差はあっても、現代の先進諸国における共通の考え方になっています。

 日本国憲法第25条(→wiki)にも、国民の生存権と国の社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上および増進に対する使命が明記されており、議論の余地はありません。

 医療はしばしば人命に直結するため、これを市場化することは生存権を脅かすことになるのでそもそも誤っている、という考え方があります。
 一方、医療の中で人命にかかわる部分は、それほど多くはない、むしろ患者の自由を尊重して、負担ができる患者はより高度のサービスを受けられるようにするべきだ、という意見もあります。

 つまり、基本的人権である生存権個人の自由は、場合によって相反する可能性があるということです。

 理念に関する問題に、簡単・明瞭な結論は出ません。国によっても考え方にある程度の相違が見られ、これが医療制度社会保障制度全体にも反映されています。

 いずれにせよ、医療の市場化生存権よりも個人の自由に重きを置くことを意味するのは間違いありません。

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  1. 2007/11/08(木) 01:19:41|
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混合診療の禁止は違法?

 2007年11月7日,東京地裁は”混合診療に対して保険の診療報酬を支払わないのは違法である”、という判決を出しました。

 混合診療というのは、公的な健康保険による保険診療と、保険適応外の自費診療を同時に行うことです。

 これまでは、保険で診療を受けている場合、個室料金や特別の食事などの療養環境にかかわるものに限って、別途に自費料金を請求することが認められてきました。しかし厚生労働省は、疾病の診断・治療という、医療の本体にかかわる部分については、先進医療と呼ばれる一部の例外を除き、自費診療の併用を認めませんでした

 混合診療が法律で禁止されているわけではありませんが、自費診療を併用した場合には保険の診療報酬を支払わなかったのです。

 厚生労働省や日本医師会は、混合診療を認めると、”一つの保険に国民全員が加入する”という現在の国民皆保険制度が崩れて、制御不能になることを恐れています。

 これは杞憂ではなく、一旦混合診療を認めれば、医療費が制御不能になるとともに、逆選択の問題が起こることはほぼ確実です。なぜならば、民間保険が診療そのものを対象とすることになると保険者が複数になり、市場原理が導入されるからです。

 おそらくは、瞬くうちに米国と同様の状況に陥り、国民皆保険制度は形骸化して、医療崩壊に向かうでしょう。

 米国の状況については下記をご覧ください。

アメリカ医療の光と影―医療過誤防止からマネジドケアまで

 

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  1. 2007/11/08(木) 10:46:38|
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医療崩壊はこれからです(1)-米国の救急医療

  日本の医療崩壊は今始まったところで、問題は今後です。
 
 救急医療、小児科などの、リスクが高く、かつ効率の悪い(従って給与や労働条件の悪い)診療科が、産科僻地医療に続いて崩壊するものと考えられます。

 米国では、1980年代に無保険者と貧困層が増加し、救急医療と急な出産に問題が生じました。

 無保険者や貧困で医療費を払えない患者は、日中でも救急外来しか行くところがありません。しかし、このような患者を受け入れると、病院は診療費を取りはぐれることになるため、たらい回し(転院)やきちんとした診療の拒否(patient dumping):が頻発しました。

 小規模な民間病院は経営が成り立たない救急医療から手を引き、行き場のない患者は、主に州や群などの経営する公立病院へ集中することになりました。

  これに対して、”1986年の救急治療と出産に関する法律(Emergency Medical Treatment and Active Labor Act of 1986 (EMTALA))”、という連邦法が成立し、メディケア(米国の高齢者用公的医療保険)の対象病院に対して、救急患者と急な出産の受け入れと、病状が安定するまでの治療が義務付けられました。
 
 日本の大きな救急病院が1年間に扱う患者数は2万人程度ですが、患者が集中する米国の都市部では7万人くらいが普通です。このため待ち時間が長くなり(平均6時間というところもあります)、待っている間に亡くなる人が出てくるため、来院患者をスクリーニングして、重症患者には速やかな処置を行い、軽症であれば最低限の治療をして帰宅させるシステムが必要になります。

 こうしてテレビでお馴染みのER救急医が確立し、急速に広がっていったわけです。

 米国東海岸のダウンタウンにある某州立大学付属病院の管理者によると、現在ER受診患者で医療費が払えるのは20%くらいで、あとは税金で補填されるとのこと。

 このように市場原理の米国でも、救急医療や急な出産には法律による規制が行われ、またかなりの部分が税金でまかなわれて、何とか維持されています。
  
 医療保険の一元化ができれば、このうちかなりの部分を保険による一般診療にシフトできると考えられるため、民主党のクリントン議員は時期大統領選挙の目玉にしています。

 日本は、同じ道を逆行していく可能性があります。最近では、地域の救急医療機関が救急医療から撤退し、救急患者が一極集中する傾向が出てきています。

 きちんとした法律の制定や財源の確保が必要なはずですが、現状ではかなり困難でしょう。

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  1. 2007/11/14(水) 17:25:21|
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医療崩壊はこれからです(2)-混合診療解禁か

 11月15日の報道によれば、政府の規制改革会議混合診療を全面解禁すべきだという答申を12月出すようです。

 今後どうなりそうか、順に分析してみましょう。

 現在の医療制度を決めている勢力には、厚生労働省日本医師会保険者(企業や組合)のほかに、財務省内閣規制改革会議、さらに野党があります。

 厚生労働省日本医師会は、混合診療によって現在の医療制度が瓦解することは理解しているので反対します。しかしながら、様々なバッシングや改革によって、既に国民からの信頼は低下しており、以前のような政治力はありません。

 財務省は、国の財政支出を抑えることにしか興味はありません。医療を一部市場化して国庫負担を減らせれば、あとはどうでもよいので、混合診療には賛成します。

 保険者は、保険外の負担が増えることには無関心でしょう。また、製薬業界や保険会社など財界の一部は、膨大な市場が創出されることになるので、大賛成でしょう。また、市場が飽和して困っている米国の医療産業大喜びします。

 規制改革会議がこのような答申を出すからには、現在の内閣も、混合診療の導入に肯定的と考えられます。

 民主党反対するでしょうが、混合診療の危険性に気がついているのは一部と思われるため、過小評価するのでははないでしょうか。

 以上のバランスを勘案すると、この件を医療費削減の脅しに使っているのでないかぎり、来年度予算にあわせて混合診療の導入が決まる公算は高そうです。

 厚生労働省と医師会にクリンチをかけられて若干中途半端な形になるとは思いますが、導入されれば医療崩壊加速して、米国へまっしぐらです。

 混合診療とその危険については、以前のページ
 日本医師会の言い分は、こちら
 米国の泥沼詳細は、アメリカ医療の光と影

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  1. 2007/11/15(木) 22:08:28|
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米国医療制度の概要-医療崩壊はこれからです(3)

 米国の医療制度を簡単にまとめておきしょう。

 米国の医療費は、総額200兆円弱でGDPの16%、このうち公的保険民間保険でそれぞれ半分弱、残りは自費でまかなわれています。なお、無保険者が約4,700万人いると推定されています。

 日本の国民医療費は33兆円で、総額医療費はGDPの8%、このうち84%公的保険で支払われています。

 つまり、米国の国民一人当たりの医療費は日本の2倍と、はるかに高額です。また日本と同じ医療制度であれば、米国の公的保険支出部分だけで制度を維持できることになります。

 民間保険部分は完全に市場化されていますので、これが拡大しても(利用者の評判はともかく)経済の面からは問題なく、むしろ経済成長の原動力になっています。問題は税でまかなわれる公的保険の部分と無保険者です。

 高齢者障害者は有病率が高いため、民間保険では保険料が高額になりすぎて支払えません。また低額所得者には、そもそも支払い能力がありません。そこで、1965年に公的医療保険である、メディケアメディケイドが導入されその後,様々な変遷を経てきました。

 米国の公的医療保険としては、このほかに連邦公務員退役軍人の保障があります。

 メディケア連邦の提供する公的保険で、障害者と65歳以上の高齢者を対象とします。A、B、C、Dの4区分があり、Aは無料ですが急性期の短期入院しかカバーしていません。B,Cは長期入院保険、Dは薬剤費の保険ですが、別途保険料の支払いが必要です。

 メディケイドは、連邦が提供する公的保険で、低所得者を対象としています。、もともとはシングル・マザー出産費用とその子供の医療費を保障するのが主眼でしたが、現在は州によって様々なプログラムがあります。通常、メディケイドとメディケアは併用可能です。

 メディケイド、メディケアは、同じ疾病を診療しても民間保険とは支払われる保険金額が異なっています(民間保険の半分ぐらい)。また、メディケアAだけしか加入していないと、長期入院費や薬代が支払われないため、できるだけ速やかに退院することになります。

 メディケアや安い民間保険では、カバーされる範囲狭く自費負担が多いため、病気になったために破産することも珍しくありません。

 一方、民間医療保険は市場化されていますが、保険料を福利厚生の一環として雇用者が支払うのが普通なので、どの程度の保険に入れるかは、雇用先企業がどれだけ職員を優遇しているか、あるいは労働組合の強さなど、によって決まります。

 大企業の経営者や幹部職員などは、一般に高額の保険に入れますが、中小企業や個人商店の職員は安い保険しかは入れません。そして、安定した職につけない場合、無保険者になってしまいます。

 米国医療制度の状況は、アメリカ医療の光と影

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  1. 2007/11/19(月) 12:52:55|
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ドイツの医療制度-医療崩壊はこれからです

 ドイツフランスは、日本に近い保守主義型福祉国家レジーム。(社会福祉制度へ)に属し、医療制度も日本に最も類似しています。それぞれの特徴を、日本と比較しながらまとめましょう
 ドイツの医療制度は、様々な職域共済組合に起源を持つ社会保険制度が主体になっており、これらが統合されて、国民皆保険制度に近い制度となっています。ただし最近まで、所得が一定以上の富裕層(人口の約8%)などは社会保険に加入できない規則になっていたのが特徴です。

 ドイツの医療費(対GDP比)、医師の数(対人口比)は、ともに日本の約2倍で、充足度は高いと考えられます。また、社会医療保険に税金全く使っていない点も大きな特徴です。

 ドイツの病院は、ほとんどが公的病院で一般外来診療は行わず、初期治療は救急医療を含めて一般医(初期診療を行う開業医)が対応します。この明瞭な機能分化も大きな特徴です。かつて、一般医が救急診療を行わなくなって問題化したことがありますが、医師会自律的に各一般医に救急診療を義務付けることによって解決しています。職能集団の権力が強い一方で、職能集団の社会的義務に対する意識、自制心の高いことが伺えます。

 医療費の増大に対して、これまでいくつかの改革ジェネリック医薬品使用の義務化や包括医療の導入など)が行われています。

 以上から、ドイツの医療制度から日本学ぶべき点を整理しましょう。

 1.日本の医療制度が財政政策との関連で政治課題になり、財務省新自由主義者に影響されたりするのは、税金が投入されているからなのです。安易に税金を投入せず、社会保険料で制度を維持すれば、政府や政治とは無関係受給者はその権利を強く主張することができます。

 2.医療者側専門家集団としての立場で主張を続けるためには、自身の社会的義務を果たすべく、自らを律することが必須です。
  
 日本の厚生労働省の考え方や方向性は、ドイツの医療制度にかなり近いものです。ドイツと異なっているのは、保険者医療者の基本になっている職能集団の力が弱く、また自らの社会的義務に対する意識が希薄であり、これに対して国の力が強い点にあります。

 その結果、安易に税金が投入されてきたため、財務省新自由主義者介入して、制度が破壊されつつあると考えられます。

 保守主義型福祉国家レジームを維持するなら、職能集団”お上には頼らない”という意識自律自制が必要であり、これができなければ、他のレジームへ移行せざるを得ません。

 もちろん、ドイツでも医療費上昇による財政破綻は大きな問題であり、様々な改革が議論されています。メルケル首相は、2007年4月から完全な国民皆保険制度を導入し、さらに国庫補助の拡大などの改革を行おうとしています。

 また、保守主義型福祉国家レジームに特有の、労働市場の硬直化による高い失業率、年金制度におけるモラルハザード(労働時間や就業期間の過剰な短縮)などのため、シュレーダー政権以来構造改革が行われてきました。

近年、保守主義の基本である、家族職域集団結束が緩んできていますが、それでもなお、レジームの根本は変わっていません。どのような対応が行われていくのか、注目されるところです。

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  1. 2007/11/22(木) 23:10:10|
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フランスの医療制度-医療崩壊はこれからです

 次にフランス医療制度について検討しましょう。

 フランスは、ドイツと同じ保守主義型福祉国家レジームに属し、職域集団が主体になっています。一方憲法で選択の自由が保障されているため、医療制度上でも、選択の自由が確保されています。(福祉国家レジームについては以前のページ参照)

 このため、医療機関に多様性があり、混合診療自費診療も行われているのが特徴です。元々革命によって成立した国家であり、また自由、平等、友愛国家の理念であることから、このような特徴が生じているものと考えられます。

 日本の保険制度でも、医療機関を自由選択することができますが(フリーアクセス)、この点はフランスに類似しています。
 
 医療費(対GDP比)や医師数(人口あたり)は、ドイツより少ないものの、日本よりはずっと高水準です。

 ドイツと同様に一般医を主体とする外来診療と専門医が主体の病院薬局に機能分化しており、初期診療は一般医が行い、必要があれば病院へ紹介するのが原則です。しかし、国民は受診先を自由に選択できるので、直接病院を受診することも多く、病院の救急外来が繁忙になって研修医がストライキを行ったりしています。

 医療制度は公的社会保険によって成り立っています。雇用者負担が被用者負担よりはるかに多いこと、また税金使われていないのが特徴です。職域労働組合が組織化されて強い力を持ち、社会保障政策に関与しているためです。

  国民皆保険で、ドイツと異なり富裕層も社会保険の対象になりますが、混合診療民間保険のみを扱う富裕層向け医療機関が存在します。
 
 現在のところ混合診療の多くは外来診療にかかわるものです。病院の大半は国立もしくは公立で、公的社会保険による診療を主体にしています。民間病院の多くは富裕層向けで、strong>混合診療や民間保険が主体になります。

 日本と同様に30%前後の自己負担があり、また医療費は一旦患者が支払った後償還されるようになっています。この償還率が医療機関にとって異なるため、不足分を民間保険で充当することによって事実上の混合診療になっています*。

 医療費削減のために、ジェネリック医薬品への変更や包括医療が導入されている点はドイツと同様です。

  なお、フランスの救急医療は、消防機関ではなく厚生省所轄の国家機関SAMU)が行っていおり、日本とは全く異なるシステムです。SAMUは救急医療情報センター()と重篤な傷病者を対象とする機動ICU(医師、看護師の搭乗する高規格救急車やヘリ:SMUR)を運用しています。

 救急医療情報センターは、病状に応じて患者からの医療相談から医師の派遣、日赤や民間の救急車派遣、SMURの派遣などを一括管理しており、事故や災害などでは消防機関とも連携します。このシステムは、利用者満足度が高いものです。

 また、フランスでは少子化対策として、 出産に関する医療は全て無料(自己負担なし)で提供されており、これが他の政策とともに出生率向上に寄与しています。

 これらの医療制度は、なんとか機能していますが、医療費はかなり高水準で、特に雇用者負担多いため、、企業が国外に出てしまい、高い失業率の原因になっているなど、保守主義社会福祉国家レジーム特有の問題が生じています。

 今後は、保険者の力を強め、民間医療保険への依存度を高めるなどの方向となりそうですが、職域集団既存勢力の力が強く、容易ではありません。また、混合診療民間医療保険病院での診療に大きく広がると、米国と同じような問題は生じて、制度が崩壊する可能性があります。

 *詳細はこちらのサイトを参照

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  1. 2007/11/23(金) 13:55:43|
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