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医療 社会福祉 経済

医療や介護、年金などの社会福祉政策と経済との関係は、国家の根本にかかわる大きな問題です。また、高齢化と経済成長の鈍化が見られる先進国に共通の難題でもあります。制度をどのように改革すべきか考えましょう。

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福祉国家レジームと日本の社会保障制度


 1990年にエスピン・アンデルセンというデンマークの社会学者が、福祉国家クラスター分析により3つに類型化し、福祉国家レジーム(→wiki)という概念を提唱しました。
 様々な異論はあるものの、現在でもこれが社会保障制度を考えるうえでの基本になっています。

福祉資本主義の三つの世界 (MINERVA福祉ライブラリー)

 分類の主な要素として、社会権の脱商品化(社会権が市場経済から分離されている度合い)、社会的階層化(社会政策によりどのような階層化が行われているか)が用いられ、また類型は雇用に大きく影響することが示されています。

 社会民主々義型福祉国家レジームは、スウェーデンやデンマークなどの北欧諸国に見られるものです。同一労働同一賃金完全雇用が原則で、最も脱商品化の程度がくなっています。社会福祉や雇用は政府により提供されますが、維持するのに膨大な財政負担を要し、、国民負担率は高くなります。社会福祉部門の公務員として、多くの人員が雇用されています。

 、自由主義型福祉国家レジームは、米国などに見られるものです。労働者も市場原理に委ねられているため、脱商品化の程度はくなります。福祉は市場から個人の負担能力に応じて提供され、社会福祉や雇用に対する国家の介入は貧困層などに対し最小限にとどめるため、国民負担率は低くなります。

 保守主義型福祉国家レジームは、ドイツなどの欧州大陸諸国にみられるもので、家庭職域集団が福祉を提供し、政府は不足部分に対する補完的保障を行います。脱商品化は中等度とされています。職域労働組合に加入している労働者は保護されますが、それ以外は排除されるため、失業率が高くなります。
 また、国家が政策を主導する国家主義国家コーポラティズム(職域集団が高度に組織化され、さらに国家に統合された全体主義的体制)が見られます。このような国家では、公務員の地位が高く、特権的福祉を受けているのが特徴です。

 日本や韓国などは血縁による影響度が高く、これらの類型とは異なるという意見もありますが、基本的には保守主義型の福祉国家レジームに近く、自由主義型のレジームの要素も持っていると考えられます。


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  1. 2007/11/10(土) 15:29:25|
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スウェーデンの医療・年金改革と日本の改革

 先進国の経済成長率が高い間は、いずれの福祉国家レジーム前のページ)もよく機能していました。しかし、その後の経済成長率鈍化や社会の高齢化などにともなって、様々な問題が生じてきました。

 スウェーデン医療制度では、社会民主主義型レジームにつきもののモラルハザードによる弊害のため、社会的入院(不必要な長期入院)が非常に多くなって財政を圧迫するなどの問題が生じました。その結果、1992年にエーデル改革と呼ばれる医療制度改革が行われました。

 エーデル改革の骨子は、医療政策の地方自治体への分権化、高齢者医療における看護師の責任・権限の強化在宅医療グループホームなど)へのシフトです。
 
 現在日本の厚生労働省が計画している医療制度改革も、基本的にはこれと同じものです(詳細はこちら)。

 問題は、財務省自民党の新自由主義者社会保険料を値上げせずに、医療費の圧縮増税(おそらくは消費税)、後期高齢者の自己負担増を財源として考えている点にあります。国の財政赤字と、小泉改革による自由主義型レジームへの方向性があるためです。

 消費税増税による需要の減少経済成長が鈍化し、一方医療費圧縮による医療の過少供給人材の流出、所得逆進的な自己負担増などが加わって、かなり悲惨な状況になる可能性が高いと思われます。

 また、自由主義型レジームを信奉する経済財政諮問会議などの圧力で混合診療を認めれば、一気に医療崩壊が進行するでしょう(混合診療)。

 スウェーデンでは、年金についても、社会の高齢化に伴って財政が悪化し、世代間の負担格差が拡大するなどの問題が生じました。約10年の長い議論を経て、1999年に公的年金制度の改革が行われました。

 この方式の骨子は、積み立て式年金とする、保険料率を所得の18.5%に固定する(所得比例年金)、というものです。

 日本も、国民全体に対してある程度の公的年金水準を維持するのであれば、概ねこの方向で行くしかないのですが、既に支払った保険料の扱いが難しい、高齢化の速度が速く世代間格差が著しい、社会保険庁への不信、などの課題があり、簡単ではありません。

 さらに、職域単位の年金を統合したうえで、年金保険料を値上げする必要があるため、国民が保守主義型から社会民主主義型へのレジーム転換に合意しないかぎり、実現はかなり困難と思われます。

 いずれにせよ残された時間は少なく、年金を政治課題にして与野党がにらみ合っている暇はありません。

 まずは社会保障の専門家が十分に議論したうえで、国民にわかりやすく状況を説明することが重要です。

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  1. 2007/11/10(土) 22:09:49|
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少子化と福祉国家レジーム-医療制度改革

 先進諸国の中でも、欧州(特にイタリアなどの南欧)、日本、韓国などでは、急速に少子化が進行しています。

 これには様々な要因が関わっていますが、福祉国家レジームも大きく影響していると思われます。

 社会民主主義型レジームでは完全雇用が原則ですので、基本的に女性も就業します。そのかわりに育児、教育、介護などは社会全体で保障するため、出産・育児に大きな支障はなく、少子化が起こりにくいのです。
 もちろん、スウェーデンの女性は社会福祉関係の公務員に多く、民間企業の管理職には少ない、などの問題はありますし、伝統的な家庭が成り立たなくなることが長期的にどう影響するかはわかりません。

 一方、保守主義型レジームでは、家族職域集団を単位として福祉が提供されます。職域集団の主な構成員は男性の正職員でそれ以外は排除され、女性は家庭における育児や介護の要員となることを期待されるため、社会進出が阻害されます。このような状況が、晩婚化出生率低下を招き、少子化の大きな原因になっています。
 家庭を重視する原因として、東アジアでは儒教が、南欧ではカソリックが影響していると思われます。
 また、ドイツやフランスのように少子化に伴う労働力不足を外国人に依存すると、既存の職域集団に帰属しない労働者が増えてしまうために社会の二重構造化が起こり、不安定になります。

 自由主義型レジームでは労働市場が発達して雇用の流動性が高く、その理念から職域集団による分断は起こりにくいと思われます。米国では、政府の積極的な介入もあって女性マイノリティの社会進出は著しく、また多くの移民を受け入れているため、出生率は落ちていません。

 少子化高齢化を加速します。また女性の社会進出が遅れると、労働力の利用が非効率になり、国の生産性向上を阻害する可能性があります。

 このままの状況では、さらに少子高齢化が進行し、いずれは経済成長が困難になると想定されることが、保守主義型福祉国家レジーム転換が避けられない、と考えられる理由の一つです。

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  1. 2007/11/11(日) 13:36:30|
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医療はどのような財か-公共財、私的財、価値財

 医療制度は公共的なものと言えるのでしょうか。

 一般に、公共財私的財は次のような基準で分けられています。
 1. 利用者を排除することが可能かどうか(排除性)。
 2. 利用者が増えた時に、追加コスト(限界費用)がかかるかどうか(競合性)。
 利用者の排除が不可能(非排除性をもつ)で、かつ利用者が増えても追加コストが全くかからない(非競合性をもつ)ものは、純粋公共財と呼ばれ、教科書では国防外交などが該当するとされています。純粋公共財は、市場にまかせると過少供給になるため、必要に応じて政府が税を用いて維持しなければなりません。

 一方、利用者を排除可能で、かつ利用者が増えると追加コストがかかるものが私的財です。私的財は、市場に委ねることによって効率的に供給されます。 

 非排除性・非競合性のうち、どちらかの性質をある程度もつものは、公共財(広義の公共財)と呼ばれています。準公共財には、道路や港湾、水道辞表など様々なバリエーションがあります。準公共財は民間、政府いずれも供給することが可能です。

 以上の性質とは別に、財に社会的な意味合いがあるかどうか、という基準があります。社会的に価値のあるものは価値財(メリット財)、マイナスの価値があるもの(麻薬など)は負の価値財と呼ばれています。

 医療や教育は、基本的には私的財としての性質を持っていますが、社会的な価値があるので価値財(メリット財)であり、ある程度公共性があるものと考えられます。

 価値財がどのように供給されるかは、個々の利用者ではなく、社会全体にとってどのような効用が期待できるか、によって決まります。従って、民主主義国家では、国民の総意としての価値判断が最も大きな影響を与えます。


  これまで述べてきた経済面からの医療に対する考え方を整理すると、次のようになります。

 1.医療は私的財なので、市場で供給するのが最も効率的である。ただし、情報の非対称性によって様々な問題が生ずるので、政府の介入が必要である。

 2.医療は社会に有益な価値財であるため、公共性がある。政府がどこまで関与するかは、医療の社会全体への効用に対する国民の総意で決まる。

 3.我が国においては、少なくとも国民の生存権は保障されなければならない。


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  1. 2007/11/13(火) 08:34:18|
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日本型社会福祉国家レジームの特徴と課題

 日本福祉国家レジームの特徴を整理して問題点を考えましょう。

 1.基本的には保守主義型レジームであり、福祉家族職域集団内の相互扶助に依存している度合いが高い。特に、儒教の影響のため家族への依存が大きい。

 2.高齢化によって、家庭における女性への負荷過大となりやすく、これが女性の社会進出阻害する。このため、少子化に拍車がかかるとともに、労働力不足する。また、家族による扶助は、早晩限界を超えて破綻する。(ここまでは以前のページ参照)

 3.移民は、既存の職域集団に属さず、血縁に乏しいため受け入れられにくい。また、二重構造を形成してしまう。

 4.グローバリゼーションの影響により、零細企業や単純労働の賃金低下が顕著となる。貧困層が形成され、また低賃金労働が海外へ移転して国内の失業が増える。

 5.状況が進行すると、老後への不安によって、消費が減り貯蓄投資が増える。需要不足により経済停滞する。

 6.需要の不足を公共事業で補うと、政府の財政赤字が拡大する。

 現在のところ、対中貿易などによって何とか状況が維持されていますが、順調な経済成長が続く韓国中国でも類似の構造下で少子高齢化が進行しているため、10年ほどすれば、同じ状況に至る可能性が高いと思われます。

 また、環境汚染地球温暖化の状況から考えて、中国経済成長には限界があります。

 米国では、再び貿易赤字財政赤字が増加しており、厳しい状況となっています。

 それでは、日本にはどのような方策がありうるのかを、次に検討しましょう。

 つづく

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  1. 2007/12/05(水) 01:13:51|
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現状維持が不可能なことを認識する

日本社会福祉国家レジームは、元来ドイツの制度を骨格にしており、保守主義的社会福祉レジームに属しますが、福祉における家族の役割が大きい点に特徴があります。

  同じような特長を持つ韓国やイタリアなど南欧の国家でも、現在極端な少子化が起こっており、同じ問題に直面しているのは、前に述べたとおりです。→以前のページ参照
 
つまり、家族に重点をおいた保守主義的社会福祉レジームには、急速な少子化が避けられない、という根本的な欠陥があると考えられるのです。

  また高齢化の中で少子化が一層進行すると、そもそも家庭内における介護などの提供はその能力を超えるため不可能です。このような福祉国家レジームは、永続性問題があります
 
もちろん、少子化の問題は女性自立社会進出という問題(ジェンダー問題)とも表裏一体のものです。

 端的に言えば、極めて長期的見れば現状維持は不可能であることを、我々は認識しなければなりません。

 まず行わねばならないのは、出産・育児教育などは家庭の役割であるという考え方を捨てて、周産期医療児童福祉政策を強力に推進することです。

 また現状が継続すると、高齢者の介護・福祉・医療などを行う労働力が、決定的に不足します。現状でもこれらの現場では人手不足が続いており、これが医療崩壊の一因にもなっています。

 この将来の労働力不足を補うには、大量の移民を入れるのでなければ、就業率向上させる、つまり女性の就業促進、定年延長もしくは撤廃するしか方策はありません。

 これらの労働市場は純然たる内需であって、貿易の対象とはならないので、グローバリゼーションの影響をほとんど受けません

 そして、GDPは間違いなく増加します。

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  1. 2007/12/24(月) 21:38:56|
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